第23回「湖医会賞」をいただくことになり大変光栄です。今回の受賞の対象となった研究の一部を紹介させていただきます。
動脈硬化の画像診断
炎症や生活習慣病に関連した血管内皮機能障害や動脈硬化の進展、そして狭心症や心筋梗塞、心筋症から心不全に至る病態の把握は大変重要となります。冠動脈予備能正常者の心血管イベント発症確率から疾患の発症予測を行いました。冠動脈と末梢血管での内皮機能異常との関係を明らかにし、そして、心筋梗塞後の左室リモデリングと血管内皮機能との関連を証明しました。そして糖尿病の狭心症患者の痛みを生じない心筋虚血と心臓神経障害の関連を示し、心筋症の運動時の心筋虚血において脂肪酸代謝異常を生じることを明らかにしました。さらに厚生労働省科学研究として、心筋脂肪酸代謝を評価することで冠動脈形成術後の心機能回復が予測できることを観察し、分子イメージング手法を用いて心筋ミトコンドリア機能の評価から病態を把握する診断法の開発や、N-11アンモニアPETとC-11メチオニンPETによる虚血性心疾患のリスク層別化研究を行い、非侵襲的心臓画像診断による冠動脈評価法を開発することができました。
循環器診療のエビデンス構築や技術治療開発のための共同研究
心筋血流イメージングによる疾患発症予測をまとめ、虚血性心疾患、糖尿病、慢性腎臓病患者を対象とした多施設共同臨床研究(J-ACCESS研究1,2,3,4)を行うことで、EBM作成のための仕事をしてきました。循環器検査の適応についてのガイドラインの作成にも携わらせていただき、エビデンスを現場に伝える役割を果たしてきました。非侵襲的画像診断によって得られる冠動脈の解剖学的情報を臨床に利用できる技術開発することができ、その後、日本と米国の国際共同研究のコーディネーターとして交感神経画像による心不全予後評価の臨床的意義を報告しました。腎交感神経機能評価や心筋症に関する臨床研究を含めた、国際的、学際的、横断的な臨床研究から、日本心臓核医学会賞、日本核医学会賞、そして今回の湖医会賞を受賞させていただくことになりました。
現在は、これまでの研究、臨床と教育での経験を活かしてエビデンスを実践する内科臨床医として仕事をしています。今回の受賞を励みに今後も臨床と研究に誠実に取り組み、臨床研究が生活習慣病の予防として社会に役立って人類の健康の増進に役に立つように努力を重ねていきたいと思います。