この度は7,000人近い湖医会会員の中から第21回湖医会賞を受与いただき大変光栄に存じます、皆様にお礼申し上げます。 今回湖都通信への投稿の機会を得ましたので、受賞の対象となったこれまでの取り組みについて紹介させていただきます。
1.地域医療構想の必要性―湖南メディカル・コンソーシアム設立
滋賀県南部は今後20年間人口が増加し、若年壮年層の減は小さく高齢者人口は急増すると想定される2025年は団塊の世代が後期高齢者となり急性期~慢性期病院機能を地域がどう維持するかという地域医療構想策定が重要となります。
厚生労働省は地域医療連携推進法人制度を発足させましたが、我々はこの湖南医療圏での医療機能別完結率と患者の流入出状況を分析し、医療機関相互間の機能分担を効率化する地域医療連携推進法人を構想しました。
2020年設立した湖南メディカル・コンソーシアムは湖南・大津医療圏にまたがる33法人101施設が参加する民間主導型の非営利法人であり、地域医療構想と地域包括ケアシステムの実現を目指し運営を開始しています。
2.医療におけるデジタル トランスフォーメションシステム(Dx)
~コマンドセンターの創造~
2018年に経済産業省はデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、物品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化を変革するDx構想を提唱しました。
我々が医療におけるDxとは何かと考えた時、電子カルテ等の各種情報システムのデータを統合しリアルタイムで患者動態やスタッフの負荷量を分析・可視化するDxを創造するコマンドセンター設立を考えました。
それはデータの統合分析サーバと複数のタイル(Tile)と呼ばれるアプリケーションで構成されており、このTileを通じて病床管理・入退院支援に必要となる院内データを分析・可視化し、患者の急変リスクの予測、ケアの進行、退院計画、施設間の移動などをTileに表示することが可能となりました。これにより院内で刻一刻と変化する患者の状況をリアルタイムに捕捉し、医療従事者の高品質かつスピーディーなケアの実現ツールとなりました。
その成果を振り返ると淡海医療センターではコロナウイルス感染症が拡大する以前の一般病床稼働率は89.5%、感染拡大期である2020年度は89.9%でしたが、コマンドセンター稼働後の2021年度は病床の一部をコロナ専用病棟に振り分けたにも拘わらず94.1%と高い稼働率が維持できました。入院中急変、重症化する患者の一般病床からICU/HCUへの転棟件数は5件/月(17.2%)増加し、救命のための高度医療を適切なtimingで提供できるようになりました。コロナ禍でスッタフの欠勤等で人員的に厳しい病床運営を強いられる中、看護師の残業時間は2020年度と比して44%(月1035時間)削減することができました。
最後に、今まで点でしか結ばれていなかった湖南メディカル・コンソーシアムの施設が、コマンドセンターを中心としたDxの力をもって今後は面で地域を結び支える真の地域医療構想、医療イノベーションの推進が実現すると考えています。