9期生の湯浅です。今回は第19回『湖医会賞』をいただくことになり、大変光栄に思います。お世話になりました諸先生がた、同窓会の皆様、推薦いただいた藤原遼先生、そして何よりも、研究・臨床生活を支えてくれている家族に心より御礼申し上げます。これまで、引っ越しも10回以上することになりました。受賞にあたり私が歩んできました道のりと対象となった基礎研究、臨床医としての仕事についてご紹介させて頂きたいと思います。
~泌尿器科入局から僻地中核病院へ~
卒業後、滋賀医大泌尿器科に入局し臨床医としの生活をスタートいたしました。その頃の滋賀医大は新設大学で近隣に関連病院がなく、研修医修了後は日本海側の僻地中核病院での1人泌尿器科医長が恒例でした。僕は、福井県小浜市民病院、京都府弥栄町国民健康保険病院で研鑽する機会を得ましたが、自治医大卒の木村晋也先生と一緒に働いたのもその頃でした。人口は少ないものの、その地方で唯一の泌尿器科医として働く機会が与えられたのは大変貴重な経験ができたと思います。
~大学院からハーバード留学を経て京都大学へ~
大学院では、磯野高敬先生と吉貴逹寛先生に教わり毎日PCRを行い、現在は尿路上皮がんの病理診断として欠かせないウロプラキンのDNA配列を決定や、現在ではliquid biopsyとして広く知られるようになる血中がん細胞の検出などを精力的に行いました。その後、Harvard Medical SchoolにてJing Zhou先生のもとでpoly-cystic kidney diseaseの遺伝子研究に従事しました。昨年、滋賀医大泌尿器科の後輩である小林先生の推薦状依頼を受けたのも嬉しい縁を感じます。帰国後は、木村晋也先生に誘われて京都大学輸血細胞治療部の前川平先生のもとで基礎研究を継続することができました。
~臨床医として活動再開~
秋田大学の羽渕友則教授のもとで、泌尿器科医として臨床復帰させていただく機会をいただきました。このころ泌尿器がんに対しても分子標的治療の治験・臨床導入が開始された頃で、大いに興味を持って臨床を再開できるとともに、motivationの高い若い先生たちの研究活動を指導できる機会にも恵まれました。その後、現在のがん研有明病院で泌尿器がんの薬物療法を担当することになり現在に至ります。がん研有明病院は、本邦のがん治療において中心的な役割を担っているhigh volume centerです。今回推薦してくれた藤原遼先生の他、高い志を持った多くの若い先生たちと、臨床医として厳しく働き、研究では楽しんで指導する機会をいただきました。
現在卒後30年を超えましたが、そのうち10年を基礎研究、20年を臨床医として働いてきました。どちらの立場も経験できるのは医学部卒業生の特典の一つと思います。臨床医としての視点から基礎研究ができるのは大きなアドバンテージがありますし、基礎研究者からの視点は実臨床にも必ず生きてきます。現在、滋賀医大の学生さん、若い先生がたは大きな可能性を持っています。大学を卒業すると、さまざまな病院で研修を受ける機会があると思います。現在は、僕らが医師になった頃よりも遥かに教育・指導システムが充実しています。皆さんが、自分の可能性を信じて、大いに学び、大いに楽しんで、自分の人生を邁進くださることを祈念します。