藤宮 『教育領域』『研究領域』

  「愛すること、夢見ること、そして創造すること」

    藤宮 峯子

    (医1期生、 滋賀医大解剖学講座 助教授)



 第4回湖医会賞をいただくことになり、大変光栄に存じます。推薦をいただいた富山医科薬科大学教授の笹原正清先生には深く感謝致します。

 本学を昭和56年に卒業してから、内科研修医、一般病院勤務、大学院、解剖学助手、助教授とひたすら走り続けた 年間でした。その間、仕事以外でも子育てやら家庭やらといろいろあったはずなのに、今となっては喉元過ぎればすべての苦労が消滅してしまって、これから先どんなすばらしい人生が待っているのだろうとワクワクしている状況です。まるで解剖学を教えている20ー21歳くらいの学生さんのフレッシュな気持ちが自分に乗り移っているようです。

 タイトルの言葉は、高校3年の時にクラス会で人生で大切なことは何かと問われ、「愛することと創造することです!」と答えたことに由来します。それから30年たってもそのとおりだと思っています。研究者としてまた解剖学の教官として生きてきたこれまでの人生は、仕事を愛し、家族を愛し、同僚や友人を愛し、何年かに一度訪れる研究の上での快挙を同僚と共に歓び合い、そしてきっと近い将来、病気で苦しむ人々を救う画期的な治療法が見つけられるはず、とひたすら夢みて生きてきました。

 今回の受賞でもっともうれしかったのは「研究と教育の両面での貢献」が認められたことです。 歳で解剖学の助手になった時に描いた将来の夢は、1、医学研究者として一流になりたい。2、若い人に尊敬されるような生き方をしたい。3、仕事も家庭も自分の生き甲斐も、どれかを犠牲にするのではなくトータルに最高級を追求したい、というものでした。教育に関しては明確なビジョンがありました。学生に向き合って教訓を垂れるのではなく、自分自身が理想に向かって努力している背中を見せることで若い人が何かを感じ取ってくれればそれでよしと考えていました。自分の学生時代を振り返っても、たった一度しか会わなかった人から人生を変えるくらいの大きな影響を受けたりしたものです。きれいごとばかり言っていたのでは絶対に若い人の魂に訴えることは出来ません。自分も負けた、でも自分を信じてここまで這い上がって来たのだから、君もブチブチ文句を言ってないで頑張れと。精神論だけではなく、実際に実験室での試行錯誤の連続のドロくさい研究活動を見せたり、アメリカのラボに放り込んで生き馬の目を抜く競争社会で、世界中から集まった若者達がどう闘っているのかを見せることで、若い人達は確実に自分の生き方をつかんでくれるようです。

 研究に関しては、いつも人との出会いがテーマに先行していました。こんなことが実現したらすごいだろうな、あれを証明しよう、あの病気を何とか治さねばという熱い思いがぶつかり、じゃ、やるしかないじゃないの。実際に研究を遂行する為の金集め、マンパワー集め、技術面などの現実的な作業が山のようにあります。しかし、いったん夢を描いてしまった以上、しかも自分だけでなく仲間がいる以上、途中でギブアップする訳には行かないのです。不安な気持ちを「Yes, we can!」という呪文で打ち消して進みます。そしてわかったことは、全身全霊で一つの事に打ち込んでいると、お金も人もそして多くの人の助けも自然に得られるようになる事です。神さまが力を貸してくれているようで、天に向かって感謝です。まだまだ病気が治るところまでには研究成果が至っていません。遅々たる歩みですが、着実に進んできたという自信はあります。そして研究がうまく行った時には、無上の歓びを仲間と分かち合うことが出来ます。この歓びがあるからまた次の困難も乗り越えて行く事が出来るはずです。

 愛して、夢みて、そして創造的な本当に価値のある仕事を残したい。Yes, I canです。そしていつも支えてくれている人達に、Thanks a lotです。

    【プロフィール】
1981年
滋賀医大医学科 卒業
1981年
滋賀医大附属病院 研修医 (消化器内科)
1987年
滋賀医大大学院  博士課程 修了
1987年
滋賀医大解剖学第一講座 助手
1993年
ブリティッシュコロンビア大学ヘ留学
1995年
滋賀医大解剖学第一講座 助教授